機関投資家とDeFiの未来:分散化と制度化のバランスをどう取るべきか【オピニオン】
著者 : マイケル・エゴロフ氏(カーブ・ファイナンス創設者)
分散型金融(DeFi)は、金融業界において急速に影響力を増している重要なトレンドとなっている。DeFiの活動は絶えず拡大し、総ロック価値(TVL)は1000億ドルを超えている。このセクターへの機関投資家の関心も急激に高まっている。
しかし、DeFiへの機関投資家の参入が進むことで、この分野の未来に関する疑問が生じている。DeFiは参加者全員の安全性を確保しつつ、分散化と民主化という原則を維持できるのか。それとも、大手プレイヤーの要求に応えるために、「分散型金融」の本質が変質してしまうのだろうか。
DeFiの制度化
DeFiへの機関投資家の関心が高まっている事例は数多くある。その一例が、550億ドル以上の資産を管理するブラックロックのBUIDLファンドだ。これにより、かつてはニッチな概念と見なされていたトークン化証券が、伝統的金融(TradFi)とブロックチェーンエコシステムをつなぐ架け橋として注目されるようになった。
またセキュリタイズのような企業は、トークン化された資産が適切な規制に準拠することを保証するために取り組んでいる。これらのプレイヤーは、DeFi市場への資本流入を促進する上で重要な役割を果たしている。
しかし、DeFiと機関投資家の統合には課題も多い。規制や法律の不確実性に加え、マネーロンダリング対策(AML)や顧客確認(KYC)基準への適合が求められる。さらに、流動性や取引の透明性、技術的なセキュリティ、経済的リスクといった問題もある。これらの障壁により、機関投資家にとってDeFi市場は依然として参入しづらい状況が続いている。
分散型金融の可能性は大きいものの、大規模なプレイヤーは資産の安全性に慎重な姿勢を崩していない。DeFiの中核となる分散化の理念を維持しながら、機関投資家の求めるセキュリティ基準を満たすことが課題となっている。
ブロックワークスやJPモルガンの市場レポートによると、DeFiは機関投資家の参入をサポートし、必要なインフラを整備することで成長を加速できるとされている。しかし、現実はそう単純ではない。
機関投資家の関与は、DeFiエコシステムへの信頼を高め、その成長を促進する一方で、より中央集権的な要素を持ち込むリスクもある。これにより、DeFiの本来の姿が変わり、多くの人々を惹きつけてきた要素が失われるおそれもある。
RWAトークン化のリスク
DeFiにおける重要な進展の一つが、現実世界資産(RWA)のトークン化である。これには、トークン化された商品や株式が含まれ、 マッキンゼーの予測 によると、この市場は2030年までに2兆ドル規模に達する可能性がある。
しかし、RWAのトークン化は、解決すべきセキュリティリスクも抱えている。特に、トークン化された資産がDeFiに移動する際のカストディ(資産保管)のリスクが問題視されている。このような場合、その裏付け資産のセキュリティはスマートコントラクトの自動性ではなく、法的契約に依存することになる。
例えば、最も広く使用されているステーブルコインであるUSDコイン(USDC)やテザー(USDT)は、分散型プロトコルではなく、従来の銀行機関によって裏付けられている。そのため、中央集権的な管理体制に依存しており、不正や誤りの影響を受けやすい。
さらに、AMLやKYC規則に準拠する必要がある資産は、より扱いが難しくなる。例えば、短期国債トークン(STBT)は、パーミッションレスなDeFi環境で運用できるものの、利用者がKYC手続きを避ける傾向があるため、採用が進みにくい。RWAの普及における課題は、DeFiのスマートコントラクトの変更ではなく、規制遵守にある。
しかし、伝統的な金融機関(TradFi)がそのインフラを活用し、RWAの安全性を確保できれば、トークン化に伴うセキュリティ問題の一部は解決できる可能性がある。大手金融機関によって裏付けられたステーブルコインが普及すれば、信頼性が向上し、より多くの人々に受け入れられるかもしれない。また、トークン化された株式やコモディティも、従来の金融システムとブロックチェーンの融合により、新たな投資機会を生み出す可能性がある。
DeFiの未来
今後、DeFiの未来は、分散化の理念と規制に基づく中央集権的要素を融合させた「ハイブリッドモデル」へと進化する可能性が高い。このアプローチは、DeFiの本質的な利点である「仲介者の排除」と「透明性の向上」を維持しながら、セキュリティを強化するものとなるだろう。
多くの場合、未来は新旧のパラダイムのどちらかが勝つのではなく、妥協点を見出す形で到来する。DeFiは、大手機関投資家が関与しなくても自立できる強固な基盤を持っている。しかし、セキュリティや規制対応のために、ある程度の中央集権的要素を取り入れる必要がある領域も出てくるだろう。
どのような形であれ、最終的には現在のTradFiシステムよりも仲介者の少ない金融エコシステムが形成される。そして、このハイブリッドモデルが、将来の金融システムの基盤となっていくだろう。
本記事の見識や解釈は著者によるものであり、コインテレグラフの見解を反映するものとは限りません。この記事には投資助言や推奨事項は含まれていません。すべての投資や取引にはリスクが伴い、読者は自身でリサーチを行って決定してください。
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