イーサリアムのTVLが3年ぶり高値に接近　ETH価格も追随するか？

イーサリアム（ETH）の価格は1月31日以降21%下落し、過去1週間は2800ドルを維持できずに推移している。投資家のセンチメントは悪化しており、同期間に仮想通貨市場全体の時価総額が12%減少したことが、その影響をさらに強めている。

強気派は、イーサリアムの総ロック価値（TVL）が2022年以来の最高水準に達したことに期待している。しかし、TVLの増加は必ずしもネットワーク活動の活性化や取引手数料の増加を意味するわけではない。

Ethereum total value locked, ETH. Source: DefiLlama

TVLとは、流動性ステーキング、レンディングプロトコル、分散型取引所（DEX）、イールドファーミング、クロスチェーンブリッジ、トークン化資産、プライバシーミキサーなど、さまざまなアプリケーションのスマートコントラクトに預けられた資産の価値を示す指標だ。

イーサリアムのTVLは2月11日に2180万ETHに達し、2022年10月以来の最高水準となった。DefiLlamaのデータによると、これは前月比11%の増加を示している。

Total value locked (TVL) market share. Source: DefiLlama

一方、BNBチェーンのスマートコントラクトへの預け入れは過去30日間で3%減少し、56億BNBとなった。

イーサリアムは依然としてDeFi市場全体のTVLの52.8%を占める優位な立場にあり、2位のソラナは8.2%のシェアを維持している。DefiLlamaのデータによれば、イーサリアムを基盤とする主要アプリケーションには、流動性ステーキングのリドやアイゲンレイヤー、レンディングプラットフォームのアーベなどが含まれる。

過去30日間のイーサリアム上の最も成長した分散型アプリケーション（DApp）には、イールドファーミングのロイコ・プロトコルやCIANプロトコル、クロスチェーン流動性プラットフォームのステーク・ストーンやスターゲート・ファイナンスなどがある。このようなデータは、イーサリアムの成長が従来のDAppに依存しているわけではないことを示している。

TVLは増加したが、イーサリアムの手数料は72%減少

預け入れは増加しているものの、ネットワークの取引手数料はそれに比例していない。イーサリアムの取引手数料収入は2月10日までの1週間で810万ドルとなり、2週間前と比較して72%減少した。DappRadarのデータによると、この主な要因は月間取引量の37%減少したことによる。

30-day DApps transactions. Source: DappRadar

参考までに、BNBチェーンの取引量は過去1カ月で60%増加し、ソラナの取引量はほぼ横ばいだった。さらに、イーサリアムのレイヤー2エコシステムでも取引量が減少している。DappRadarのデータによると、アービトラムの取引量は30日間で44%減少し、Baseは10%減少、ポリゴンは4%の減少を記録した。

現在の状況では、ETHが短期的に市場全体をアウトパフォームする可能性は低い。TVLの増加だけでは、全体のネットワーク活動の減少を補うには不十分だろう。取引手数料の増加は、ETHの供給成長と発行のバランスを取る重要な要素であり、イーサリアムは手数料を増やす明確な道筋を持たないまま、ロールアップベースのスケーリングソリューションに依存している。この傾向は、ETHのインフレ圧力を強めている。

ETHの価格が3000ドルを超えるための最も重要な要因は、イーサリアムのステーキングを組み込んだ現物イーサリアム上場投資信託（ETF）の承認にある。現在、米証券取引委員会（SEC）が審査中のこのETFについて、一部のアナリストは「ステーキング利回りがなければ、機関投資家の関心が低下する可能性がある」と指摘している。

イーサリアムは依然としてTVLで圧倒的な優位性を持つが、ネットワークの手数料収入が回復しない限り、その成長の恩恵をETH保有者が直接享受することは難しい。この状態の改善がなければ、短期的にはETHが仮想通貨市場全体をアウトパフォームする可能性は低い状況が続くだろう。

本記事の見識や解釈は著者によるものであり、コインテレグラフの見解を反映するものとは限りません。この記事には投資助言や推奨事項は含まれていません。すべての投資や取引にはリスクが伴い、読者は自身でリサーチを行って決定してください。